コンプライアンスとは、「法令遵守」と訳され、企業が法律や社会的な規範を守ることとされています。

もっと簡単に言えば、会社や従業員が法律を守って悪事しないことということになります。

ということは、積極的に良いことをしろと求められてるわけではない。悪事さえ働かなければそれでコンプライアンスを守ったことになる。

これとは別に、企業がただ法律を守るだけでなく社会的な責任をもっと積極的に果たしていけと求められる場合はCSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)と言われています。

CSRはともかく、コンプライアンスについては今日ではありとあらゆる企業が守るべきものとされています。

コンプライアンスの目的は、一言で言うと「不祥事未然防止」ということにあるでしょう。

ひとたび企業で不祥事が起こり、それが世間様に伝わって・・・ マスコミはここぞとばかり大衆を煽って、その企業を徹底的に血祭りにあげることでしょう。このことは近時の芸能人の私生活・素行の取り上げ方や2人の知事を辞任に追い込んだことからしても明らかです。1億総裁判官、風紀委員長の時代です。対応次第ではそれがそのまま致命傷となり企業が消滅してしまうことも十分ありえます。

それゆえ企業では企業の存続のため、コンプラアンスを重視していかなければならないこととなる。

ところで、コンプライアンスを重視しても業績は全然あがりません。むしろコンプライアンスなんて無視したほうが、売上高は上がるかもしれません。

違法ぎりぎりのところで契約をとってきたり、認可された時間・条件等をオーバーして営業を続けたり・・・はたまた労働基準法なんて無視して従業員をこき使ったり・・・ 場合によってはこのほうが儲かるかもしれません。

business_black_kigyou一昔前のならこのような企業はありふれた存在でした。「どんな手を使ってもよいから契約を取ってこい!」なんてのは当たり前の序の口でした。今日ではそのような会社は「ブラック企業」と呼ばれ人材募集に苦しむこととなります。

SNSのこれだけ発達した今日、企業が違法行為を隠し通すことは大変難しく、何かよくないことがあったならSNSを通じて告発され世の中にあっという間に拡散していきます。

それでもなおTV・新聞の報道を見ると企業の不祥事がなくなっている様子はありません。

なぜでしょうか?

なぜ、あなたの会社から不祥事がなくならないか?二重三重の規則・規程の整備や研修会も何回も行っているのに・・・

これを少し考察してみたいと思います。

結論から言って、不祥事の発生確率を0パーセントにすることはできません。できるのはその確率を可能な限り下げることです。

不祥事には、次の型があります。

まず、組織ぐるみの場合、

これは経営層が関与してる場合がほとんどですので防ぎようがない、内部通報制度・外部監査の活用・監査役監査の機能によるけん制を強化するしかない。内部統制は経営者による不正を防げないという弱点を持っています。

次に、従業員による場合

1、会社財産の横領・窃盗

2、法律・社会規範に反する営業(事務)行為

3、従業員(管理者)による仕事上の問題行為(パワハラ・セクハラ・サービス残業の強要など)

4、私生活上の犯罪行為(暴力行為、痴漢・盗撮など含む)いわゆるハレンチ犯罪

以上の類型が考えられますが、このうち4以外は企業の適切な施策のよってその発生確率を下げることは可能だと思います。

4だけは企業の教育や研修だけでは抑制は難しいと思われます。そもそも従業員の私生活上の犯罪行為の責任を企業が負う必要があるのか?この点、特に公安系の公務員(警察官・自衛官)は厳しく問われ、また教師・医師なども高い水準のモラルが求められています。

ですが、採用した従業員に変な?趣味がある、他えば、決して許されないロリコン趣味とか、窃盗・盗撮癖があるとか、このようなことは日頃の態度・言動から見抜くことは難しいと思われます。適宜モラルに関する教育を行い、従業員の情操に訴えかけるほかなさそうです。

「その行為はあなたの家族に見られても恥ずかしくない行為ですか?」

こう問いかける他なさそうです。(これもサイコパスには通用しなさそうですが・・・)

1から3については適切な施策によって少なくしていくことは可能と思われます。

なぜ不祥事をするのか、一度する側の立場にたって考えてみると何かヒントがあるかもしれません。

1、会社財産を横領・窃盗する理由 : お金に困ってる、借金がある、監視がないのでつい出来心、盗み癖がある、

2、法律・社会規範に反する営業行為 :仕事が多忙すぎる、ノルマがきつい、先輩たちもやっている、上司の命令

3、従業員(管理者)による仕事上の問題行為: 社風・ワンマン・意見できる雰囲気でない、管理者へのけん制が効いていない

原因がわかると対策が見えてくるような気がします。よくある対策の一例として、

1には、人事部門等に相談窓口を設置する。社内融資制度を整備する、監視カメラ(ダミーでも可)を設ける。Wチェックの体制を整える、盗み癖のある人は治らないので証拠を押さえて首にする。

2について、仕事の分担・ノルマ・目標達成の方法を見直す、無理に契約とってきても結局は後になってその会社の評判をさげるだけ。特に自社製品の買い取りや自爆営業はさせない。これをやると社員のモチベーションが著しく下がる。

3、風とおしのよい職場作り、口で言うのは簡単だがこれがなかなか難しい、QCサークルの設置、人事考課の方法を360度評価にするとか、全従業員に対する労務管理の教育を行う。

等々・・・

実のところ、不祥事は研修会(不祥事未然防止のための)を開催してもなくなりません。何かあると、「研修を強化する」というけれどそれで不祥事がなくなったためしがない。

上述の対処法も所詮は対症療法に過ぎません。問題点を根本から断ち切るわけじゃない。

それでは、あなたの会社から不祥事がなぜなくならないか?

一言で言うと、従業員に「愛社精神」(=忠誠心)が足りないからということに尽きると思います。愛社精神を高めるには、①福利厚生の施策や催し、②人事制度、人材育成の制度を整備していく必要があると考えられます。

従業員が、その会社に対してロイヤリティ(忠誠心)があれば、「不祥事」はもう少し起こりにくくなるはず。内部けん制がきちんと効いていることが前提ですが、従業員が会社から大切に扱われていると日頃感じていれば、そう簡単には会社を裏切ることはできないはずです。

business_service_zangyou不祥事が頻発する会社には特徴がある、それは従業員がその会社を軽んじている場合だ。なぜ軽く見られるのか。それは会社自体がサービス残業・パワハラの横行などモラルの低いこと、違法なことを放置していること、この点、従業員は見ているので、次第に軽んじられ舐められるようになる。

business_jinzai_tsukaisute最初は真っ白な状態で入ってきた新卒たちも、先輩方があまりに自社の悪口を言うのでだんだん染まってくる・・・そこへきて会社が従業員を育成せず使い捨てにする風土なら、輪をかけて会社を軽んじるようになり、不祥事しやすい精神状態になる。

何度も従業員が不祥事を繰り返す会社は、自社の風土・内部管理態勢に問題があると考えたほうがよさそうです。

そうさせないため当座の施策として次の3点を提案します。いずれもさほどお金をかけずにすぐに着手できることです。

1、サービス残業はさせない。

その代わり、仕事時間中の生産性は高めてもらう、日中無駄におしゃべりしている社員・意味のない長電話をしている社員のなんて多いことか。これをコミュニケーションと思っている節がある。日本企業の労働生産性は先進国のなかで一番劣後しているそうです。市場開放が進む中、少ない時間で労働生産性を高めないともう外国に太刀打ちできない時代がきています。

2、現金違算・棚卸差損が出た時に、自腹で払わせない。よく小売業などでバイトに強要する経営者がいるが、これをやると回収しようと後でこっそりモノやお金を盗まれるようになる。本人に帰責性のないことで罰金を徴収することは法律的にもアウトです。

3、仕事スキル向上の機会を与え、会社のおかげで成長したといえる仕組み作りをする。計画的キャリア形成のための経歴管理や資格取得の奨励。

従業員による不祥事を未然に防止するためには、まず会社自身が襟を正して違法行為を慎み、社員に対し模範を示し、従業員の愛社精神(忠誠心)を高めることが一番だと考えています。誇りを持てる職場作り、これにつきます。従業員一人一人が「わが社は業界(地域)で一番のホワイト企業」と胸を張って言えるように。

愛国者(Patriot)の多い国の軍隊が強いことと同じです。

研修会や規程を整備(内部統制の整備)することも大切ですが、規程を二重三重と整備していくたびに事務手続が煩雑になり、違反者を増やし、従業員のやる気とホスピタリティが後退していく点も見過ごすことはできません。

要は目標達成のための最低限の内部統制を整備し、主として従業員のマインドを改善するのでなければいつまでたっても不祥事はなくならないことでしょう。そうこうしているうちに会社そのものが消滅してしまうかもしれません。

不祥事を撲滅し更なる企業の発展を願うのであれば、今以上に従業員の忠誠心を高める仕組みづくり、ぜひご検討下さい。

kaisya_yukyukyuka_shinkokusyo少し例えが悪いのですが、かのヒトラーはこの辺を心得ていて、徴兵制の復活・焚書・言論の自由の弾圧を行いながらも、社会保険・年次休暇制度の整備、休暇では旅行、客船や保養所等を利用できるなど、労働者をリフレッシュさせ生産力を高める施策を施したそうです。

それゆえドイツは大戦末期まで高い生産性を誇り、あれだけ激しい爆撃を加えても1944年まで生産力が落ちることはなかったと聞いています。ドイツ国防軍の強さの源泉です。

中小企業等で内部統制・人事制度等の整備がこれからの場合、コンサルに伺います。まずはお気軽ご相談下さい。行政書士事務所みらいでは、御社の現状にふさわしい内部統制のあり方・人事制度設計についてご提案いたします。

company_white_kigyou